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北海道支部について

講演会のお知らせ【2017.7.11 齊藤 有紀 先生】開催場所訂正(5.18)(2017.05.18更新)

演題

Cell/Neuron type specific mRNA splicing in the brain: Application of HITS-CLIP method for cell/neuron type specific resolution in vivo.

演者

齊藤 有紀 先生

所属

Robert Darnell Lab, The Rockefeller University

日時

平成29年7月11日(火)17:00〜18:30

場所

北海道大学大学院 薬学研究院 第一講義室

主催

日本生化学会・北海道支部

概要
  進化の過程でヒトは言語能力や他者の感情や意図の推測能力など,高度な情報処理が可能な脳を獲得した.脳は形態や機能の異なる多様な細胞種(神経細胞やグリア細胞など)で構成され,中枢神経系を形成するそれぞれの細胞種は,同一のDNA配列から,多様なmRNAと タンパク質を 産生し特異的な機能を獲得していると考えられる.
 mRNAの多様性は,転写開始点,終結点,mRNA修飾,及び選択的スプライシングによるエクソン選択 により生み出される.神経細胞とグリア細胞では使用されているエクソンが異なることはよく知られているが,中枢神経系の部位や神経細胞種間での選択的スプライシングの多様性の有無や,その制御因子及び機構は明らかになっていない.
 我々は様々な中枢神経系部位及び脳発生時期のRNA-seqデータを解析し,中枢神経系の部位および発生時期で使用されるエクソンが異なること,また,大脳皮質を構成する興奮性と抑制性神経細胞の比較や,小脳プルキンエ細胞と顆粒細胞の比較から,神経細胞種間においても使用されているエクソンが異なることを発見した.また,これらの神経細胞種間での選択的スプライシング変化は,神経細胞特異的に発現するRNA結合タンパク質NOVA2のスプライシングターゲットと高頻度にオーバーラップした.そこで,NOVA2の神経細胞種特異的な選択的スプライシングターゲットを同定するために,Cre依存的にNova2遺伝子を欠損させることが可能なNova2-cKOマウス,Cre依存的にNOVA2-GFP融合タンパク質の発現誘導が 可能なNova2-cTagマウスを作製し,細胞種特的な HITS-CLIP法およびRNA-seq法により,脳内NOVA2 splicing targetを神経細胞種レベルの 解像度で決定した.
小脳プルキンエ細胞特異的Nova2遺伝子欠損マウスは,脊椎小脳失調症(spinocerebellar Ataxia: SCA)様の運動失調と小脳の萎縮,シナプスの脱落,及びプルキンエ細胞死を表現型として示し,数種類のSCA原因遺伝子が 神経細胞種特異的NOVA2スプライシングターゲットであることを示した.これらの結果から,NOVA2は mRNAスプライシングを介したタンパク質の種類および量の多様性を生み出すことで,神経細胞種特異的な機能獲得および正常な機能維持 に貢献していると考えられる.
連絡先
北海道大学大学院 薬学研究院 神経科学研究室
鈴木 利治(011-706-3250)

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