講演会のお知らせ【2017.6.23 松野 健治 先生】(2017.06.01更新)
演題 | 細胞が示すキラリティがからだの左右非対称性をつくる |
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演者 | 松野 健治 先生 |
所属 | 大阪大学大学院理学研究科生物科学専攻 細胞生物学研究室 教授 |
日時 | 平成29年6月23日(金)17:00〜18:30 |
場所 | 北海道大学大学院 薬学研究院 第二講義室 |
主催 | 日本生化学会・北海道支部 |
概要 |
生体を構成するほとんど全ての高分子の構造はキラル(鏡像がもとの像と重ならない性質があること)である。さらに、顕微鏡下で観察できるアクチンフィラメントや微小管にもキラリティがある。しかし、これらが集合してできた細胞では、そのキラリティに関してほとんど考慮されてこなかった。
我々は、ショウジョウバエ胚の消化管の上皮細胞がキラリティ(細胞キラリティ)を示すことを明らかにした。また、この細胞キラリティによって、胚消化管の左右非対称な形態形成が起こると考えられた。野生型の細胞が「右利き」のキラリティを示すのに対し、MyosinID(MyoID)突然変異ホモ接合の細胞は「左利き」(鏡像)のキラリティを示した。MyoIDは、I型ミオシンをコードしている。MyoID突然変異ホモ接合では、消化管の左右非対称性も左右反転した。したがって、ショウジョウバエのデフォルトの左右非対称性は野生型の鏡像であり、これを、MyoIDが左右反転させていると考えられた。左利き、右利きの細胞キラリティは、ともに、アクチン細胞骨格の機能に依存して形成される。さらに、我々は、左利き、右利きの細胞キラリティは、各細胞に固有の性質として、細胞ごとに形成されることを示唆した。
一方、哺乳類培養細胞が固有のキラリティを示すことが数例報告されており、細胞キラリティが進化的に保存された現象であることが示唆される。原生動物や、螺旋卵割する胚の卵割初期の割球はキラルである。このことは、細胞キラリティが、普遍性の高い現象である可能性を示している。
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連絡先 |
北海道大学大学院 薬学研究院 神経科学研究室
鈴木 利治(011-706-3250)
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関連資料
2017.6.23-Dr.Matsuno_poster.pdf(87KB)