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北海道支部について

生命分子化学セミナーのお知らせ【17.6.26 中川 拓郎 先生】ーー日時・場所変更ーー(2017.06.20更新)

日時・場所が変更となりました。(2017.6.21)

演題

『ヘテロクロマチンのRNAポリメラーゼIIを介した染色体異常の制御メカニズム』

演者

中川 拓郎 先生

所属

大阪大学理学研究科生物科学専攻・准教授

日時

平成29年6月26日 16時30分〜17時30分

場所

北海道大学理学部本館3階 N-308号室

主催

生命分子化学セミナー

共催

日本生化学会・北海道支部

概要

 染色体上には多数のDNAリピート配列が散在し、それらを介して転座などの染色体異常が起こる。興味深いことに、リピート配列が存在する染色体領域の大部分はヘテロクロマチンを形成する。ヘテロクロマチン領域ではヌクレオソームを構成するヒストンH3の9番目のリシンのメチル化修飾(H3K9me)が起こり、これにクロモドメイン蛋白質が結合することで、RNAポリメラーゼII(RNAPII)の結合が阻害される。我々はヘテロクロマチンと染色体異常との関わりについては明らかにするために、分裂酵母を用いて染色体異常の発生頻度とその特徴について調べた。その結果、ヘテロクロマチン構造によるRNAPIIの機能阻害がセントロメア・リピートを介した染色体異常を抑制することが示唆された。H3K9のメチル化酵素であるClr4/Suv39を破壊したところ、セントロメア領域のリピート配列を介した染色体異常(同腕染色体の形成)が高頻度で起きるようになった。逆に、ヒストンH3のメチル化部位H3K9を変異しても染色体異常が高頻度で起きた。また、セントロメア領域のH3K9me維持に特異的に必須なRNA干渉(RNAi)に働くAgo1などを破壊した場合にも染色体異常が上昇した。これらの結果から、Clr4によるH3K9me修飾がセントロメアで起きることが、セントロメア・リピートを介した染色体異常を抑制すると考えられる。RNAPII結合因子Mlo3やRNAポリアデニル化酵素Cid14を破壊するとago1欠失株でのH3K9meが回復する。しかし、Mlo3を破壊したときだけRNAPIIのクロマチン結合が低下し、染色体異常も減少することが分かった。このことから、H3K9meだけでは染色体異常の抑制に十分ではないと考えられる。驚いたことに、clr4欠失株にmlo3破壊やRNAPII変異を導入した場合にもRNAPIIのクロマチン結合の低下と染色体異常の減少が見られた。これらの結果から、H3K9me自体ではなくRNAPIIの機能阻害がリピートを介した染色体異常の抑制に重要であると考えられる。

連絡先
北海道大学大学院理学研究院化学部門生物有機化学研究室
村上洋太 (電話:011-706-3813、e-mail:yota@sci.hokudai.ac.jp)

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