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北海道支部について

講演会のお知らせ【2017.11.10 小川 治夫 先生】(2017.10.23更新)

演題

「高難度蛋白質」の構造解析を通じた病態発症メカニズムの解明と創薬へ向けた取り組み

演者

小川 治夫 先生

所属

東京大学・分子細胞生物学研究所 准教授

日時

平成29年11月10日(金) 17:00〜18:00

場所

旭川医科大学医学部総合研究棟8階カンファレンスルーム

主催

旭川医科大学医学部生化学講座 機能分子科学分野

共催

日本生化学会北海道支部

概要

生命の最小単位である細胞は、細胞膜で細胞内と外界とを隔てている。細胞は細胞膜に存在する膜蛋白質を通じ、細胞外からの情報の細胞中への伝達や、イオン・栄養分等の取り込みや排出を行う。今後の医薬品の標的の大半は膜蛋白質であると言われて久しいが、膜蛋白質や膜蛋白質と薬剤等との複合体構造は、膜蛋白質の機能・病態理解や、構造を基にしたドラッグデザインにも重要であり、今後より学術的・社会的に重要となると考えられる。その一方、効果的医薬品の開発などに直結するヒト等の膜蛋白質は、構造を解くことが困難である「高難度蛋白質」であり、現状では社会的要求にあまり応えることはできてはいない。この主要因は、ヒト等の膜蛋白質の大量発現・生産が困難なためである。こうした問題に対処すべく、我々は、動物培養細胞やウィルスの組み合わせによる大量生産技術を確立し、問題の克服を行った。実際、多くの膜蛋白質で結晶化に十分量の精製標品を得ることに成功しており、これまで精製標品が大量に要求されるために事実上不可能であった生化学実験・立体構造解析に、今や取り組めるようになっている。

「高難度蛋白質」構造解析の最新成果を2例紹介したい。1例目はSERCAやNa+,K+-ATPaseに代表されるP-type ATPaseファミリーに関するものである。骨格筋に局在するSERCA1aと比して、他サブタイプで心筋やハウスキーピングに携わるもの構造解析は手付かずであったが、我々の努力により大量生産・精製系も整備され、新規構造を紹介できる状態にある。Na+,K+-ATPaseに関しては、これまで多くの構造を発表してきたが、最近ジギタリス等に代表される強心ステロイドとの複合体構造の詳細を明らかにできたので、これを紹介したい。2例目は、心房から放出され、血圧・体液量の調節を行なうホルモン「心房性利尿ペプチド(ANP)」の受容体である「ANP受容体」と様々なホルモンとの複合体構造である。ANP自体は急性心不全薬として臨床でも用いられているが、血中での寿命が約30分と短いことから、より良い誘導体が求められていた。我々が明らかにした複合体構造を基に、新規心不全治療薬の開発が期待される。

連絡先
鈴木 裕
旭川医科大学医学部
生化学講座機能分子科学分野
078-8510 旭川市緑が丘東2-1-1-1
Tel: 0166 68 2350 Fax: 0166 68 2359
e-mail:hisuzuki@asahikawa-med.ac.jp

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