特別講演会のお知らせ【2022年9月9日 田中亮一先生】(2022.08.09更新)
環境分子生物学セミナー(第23回)
演題 | 寒冷圏の常緑樹はなぜ低温下でも緑を保つことができるのか? |
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演者 | 田中亮一 教授 |
所属 | 北海道大学低温科学研究所生物適応研究室 |
日時 | 2022年9月9日(金)15:00~16:00 |
場所 | 北海道大学理学部5号館 5-813 |
共催 | 日本生化学会北海道支部 |
概要 | 「食べすぎ」が人間の健康にとってあまり良いことではないのは周知の事実であるが、植物にとっての「食べすぎ」、すなわち、過剰に光エネルギーを吸収することは、あまり良くないどころか、多くの植物にとって非常に危険である。植物が消費できる量よりも多くの光エネルギーが吸収されると、このエネルギーは活性酸素の発生を引き起こし、その量次第では植物の細胞は激しくダメージを受ける。したがって、気温が低下し、代謝活性が下がる冬季に緑を保つこと、すなわち光化学系を保持することは、北海道のような寒冷圏ではとくにチャレンジングである。多くの多年生植物は落葉することでこのような光障害を回避していると考えられるが、常緑樹は、光化学系を保持したまま光障害を回避する分子メカニズムを有すると考えられる。このようなメカニズムの中でもっとも重要と思われるのが、光化学系において光エネルギーを熱エネルギーに変換する反応で、これらはnon-photochemical quenching (NPQ)と総称されている。NPQに関しては、一年生草本植物や緑藻などのモデル植物を用いた研究が進んでいるが、常緑樹はモデル植物と共通の熱放散メカニズムに加えて、これらとは異なるsustained NPQとよばれるメカニズムを持つとされる。このsustained NPQの実体を明らかにするために、演者の研究室では、トランスクリプトーム、光化学系複合体、光合成色素などの解析を行っている。本講演では、演者の研究室の研究を中心に、常緑樹がもつ熱放散のメカニズムに関する最近の知見を紹介する。 |
連絡先 | 北海道大学大学院地球環境科学研究院環境分子生物学分野 森川正章(電話:011-706-2253) |
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