特別講演会のお知らせ【2025年5月29日 冨樫庸介先生】(2025.04.22更新)
多数の皆様のご参加をお待ち申し上げます。
演題 | 腫瘍浸潤リンパ球の解析から見えて来たもの |
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演者 | 冨樫 庸介 先生 |
所属 | 岡山大学学術研究院医歯薬学域腫瘍微小環境学分野・教授、岡山大学病院呼吸器・アレルギー内科・教授(兼任) |
日時 | 2025年5月29日(木)17時 |
場所 | 北大医学部臨床講義棟1階 第3講堂、札幌市北区北15条西7丁目 |
共催 | 北海道癌談話会 日本生化学会北海道支部 日本病理学会北海道支部 |
概要 | 免疫チェックポイント阻害薬は腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を活性化して効果を発揮していることからも、TIL解析が抗腫瘍免疫応答の本態解明には最も重要と考えている。TILは非常に不均一であるため、1細胞レベルで解析を行う必要がある。我々はヒト臨床検体由来のTILを1細胞解析することで、PD-1陽性制御性T細胞が抗PD-1抗体の耐性に寄与していることを実験も交えて明らかにした(Nat Immunol 2020)。また、シングルセルシーケンスでTILの中からがん細胞を直接攻撃しているT細胞を正確に同定し、それがPD-1などを発現した疲弊T細胞であることも明らかにした(Cell Rep 2022; Cancer Res 2024)。更にこのような疲弊の原因として代謝異常・ミトコンドリア障害が存在していたため、TILのmtDNAのシーケンスを行った。すると40%程度のTILに高アレル頻度のmtDNA変異が見つかり、更にその変異が同じ患者由来の腫瘍細胞と共通していた。実験的にもミトコンドリア伝播を証明し、部分的には変異型ホモプラスミーに置換してしまうものも出現した。更にその置換にはマイトファジー感受性の違いが寄与していることを明らかにした。mtDNA変異型TILは細胞老化が進み、機能低下を来たし、メモリー形成が障害された。マウスモデルでもミトコンドリア障害・伝播により抗腫瘍免疫応答が低下した。200例程度のメラノーマや肺癌患者の腫瘍組織のmtDNA変異を解析したところ40%程度で同様の変異が見つかり、抗PD-1抗体療法の予後不良因子であった。以上から、がん細胞は変異型ミトコドリア伝播を介してTILを抑制し、巧みに抗腫瘍免疫応答から逃れ、生き残りをはかっていることを明らかにした(Nature 2025)。 |
連絡先 |
谷口 浩二 |